映画
「ミッドナイトイーグル」
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FileNo.071130
北アルプスで野営していた戦場カメラマンの西崎(大沢たかお)は、偶然墜落していく爆撃機を目撃し、その写真を撮影する。緊急事態の匂いに東洋新聞の記者・落合(玉木宏)の血が騒ぐ。例をみない猛吹雪にもかかわらず、二人はアルプスに登っていく。山岳部の先輩後輩の二人は、アルプスを知り尽くしていた。一方、東京では週刊誌「WISE」の記者で、西崎の義理の妹・有沢慶子(竹内結子)は、ステルス機に爆弾を仕掛けた北朝鮮の工作員と接触し、事件の全容を知ることになる。北アルプスでは、猛吹雪の中、自衛隊と工作員がステルス機に搭載された特殊爆弾をめぐって死闘を繰り広げる。西崎と落合は、自衛隊の特別編成部隊の佐伯三等陸佐(吉田栄作)と出会い、この戦いに巻き込まれていく。特殊爆弾は日本の存亡がかかるものだった。工作員によって仕掛けられた起爆装置で、日本滅亡へのカウントダウンが始まる。慶子の働きでこの危機を止められるのか・・・。西崎と落合と佐伯の命をかけた戦いで日本は守られるのか・・・。

この映画に登場するステルス爆撃機ミッドナイトイーグルは“B−5”となっているが、その形からして“B−2ステルス爆撃機”がモデルであることは間違いない。ただ映画の設定では、B−2の発達型で最新鋭機ということになっている。現実の世界のことだがつい先日、米軍のB−2ステルス爆撃機2機が、北朝鮮の有事を想定した模擬爆撃訓練をした。グアム基地から発進し、ハワイで900kgの訓練用爆弾を投下し、8000mの太平洋上空で空中給油機から給油も受けた。米軍は北朝鮮に対する抑止力強化で、B−2ステルス機をグアムに配備している。一方、映画の方は、特殊爆弾を搭載したステルス爆撃機“B−5ミッドナイトイーグル”が米軍・横田基地から北朝鮮に向け飛び立つ。ところが、このステルス機は北朝鮮の工作員が仕掛けた爆弾によって、北アルプスに墜落する。この映画は全くのフィクションではなく、現実の世界で起こりうる可能性を示唆している。現実を踏まえることによって、この映画はよりリアルに見ることができる。

航空自衛隊は現在“F−4”に替わる“次期主力戦闘機”の選定に入っている。このF−Xの候補として次の4機種が考えられている。@F−22ラプターAF/A−18E/FスーパーホーネットBF−15EストライクイーグルCタイフーンである。能力的に見れば、文句なしにラプターだろうが、ハイテクがゆえに、アメリカは輸出禁止措置をとっている。しかも、イージス艦の中枢情報流出事件などもあって、日本に対する信頼も揺いでいる。それより何より、余りの高額にF−22は生産打ち切りという話まで出ている。さて、他の3機種の中から選定するのか、計画を見直すのか。もしラプターがだめなら、いっそ選定を先延ばしして「ダイ・ハード4.0」に登場した“F−35ライトニングU”にしてはどうだろう。対象の4機種は総合商社が販売代理店の権利を持っている。それぞれ@三菱商事A伊藤忠商事B双日C住友商事と聞いている。1兆円規模の巨額の商談に、こちらでも壮絶な戦いが繰り広げられていることだろう。

今朝の新聞によれば、米キティーホークとイージス駆逐艦など6隻が艦載機を飛ばして警戒監視をしながら台湾海峡を中央突破したという。米国が台湾へミサイル売却を決定したことなどが気に入らなかった中国が、報復で香港への寄港を拒否したためにとった米国の示威行動だった。大森義夫著「日本のインテリジェンス機関」(文春新書)ではこう言っている。「平穏平和はいいが、すぐ隣で、すぐ次の瞬間に何が起こるか察知しないで国家の責めを果たせるはずがない。国家に謀略性はいらないが、目的を達成するための作戦行動能力は具有しなくてはいけない」。今回の映画は防衛省、陸上自衛隊、航空自衛隊の全面協力によってつくられている。文字通り自衛隊による多様な事態への対処を見ることができる。月刊誌「MAMOR」4月号では、撮影開始を前に吉田栄作さん(佐伯3等陸佐役)が陸自・松本駐屯地での体験入隊を特集していた。こう書くと戦争映画みたいになるが、実際はそうではない。佐伯も自衛隊員である前に、家族を持つ一人の人間であり、もちろん西崎も落合も一人の人間として何をなすべきか、最後の決断を下すことになる。とにかく、エンディングは感動で涙します。
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監督 成島出
原作 高嶋哲夫(文春文庫)
出演 大沢たかお(戦場カメラマン)
竹内結子(週刊誌「WISE」記者)
吉田栄作(自衛隊・三等陸佐)
玉木宏(東洋新聞・記者)
藤竜也(内閣総理大臣)

要撃戦闘機F−15DJ
(2007・10・07芦屋基地/航空祭にて撮影。
築城基地/第304飛行隊の所属機)


航空自衛隊の主力戦闘機。映画の冒頭、ステルス機墜落の直後に小松基地の「F−15」2機がホットスクランブルで出撃する。このほか戦車の天敵 「対戦車攻撃ヘリAH-1S」の出撃などもある。


2009/05/24 F-Xは「F-35」に決まりか?
 次期主力戦闘機(F-X)の選定で、空自は依然「F-22」の可能性を捨てていないようだが、米国防長官が「日米防衛相会談」で「F-35」の採用を打診したという。会談でゲーツ長官は、米軍の次世代戦闘機をF-35に一本化する方針を決めたと、日本へもF-35の採用を暗に求めた。米はさらにシーファー国防副次官補を日本に派遣し、追い打ちをかけるようだから、F-35採用の可能性はかなり高くなった。F-Xは「F-35」に決まりか?
「F-35」・・・・米が英豪などと国際共同開発。海軍や海兵隊の要求も満たし汎用型で対地攻撃に優れる。米軍は4月、F-22新規発注見送りと、汎用性の高いF-35の増産を決めた。実戦配備は2014年ごろを予定。1機約90億円と見込まれる。ロッキード・マーチン社製。(西日本新聞記事より)


2009/07/31 西日本新聞より
米有力議員が F-22 調達断念
 【ワシントン共同】日本が次期主力戦闘機の有力候補としている最新鋭ステルス戦闘機F22をめぐり、追加調達を主導してきた米上院ダニエル・イノウエ歳出委員長(民主党)と下院のジョン・マーサ国防歳出小委員長(同)が29日までに、調達をあきらめる考えを共同通信に明らかにした。  強い予算策定権限を持つ有力2議員の意向を受け、米軍向けのF-22の生産中止は確定的になり、輸出仕様が実現しても価格は現在の1機200億円〜300億円からさらに高騰するのは必至。米国防省の反対も根強く、日本導入は絶望的となった。  イノウエ氏は、上院が予算の大枠を規定する国防権限法案からF-22調達条項を削除したことを理由に「国防歳出法案で予算化できそうにない」と事務所を通じてコメント。マーサ氏も「論争は終わった」とした。