映画「M:I:V」を観て
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トム・クルーズ演じるイーサン・ハントの「ミッション・インポッシブル」も今回で3本目となった。監督はそれぞれ違うが、いずれもアクションはすごい。特に今回は、ここまできたかと思わせる激しいアクションを見せてくれる。現役を引退したイーサン・ハント(トム・クルーズ)はIMFの教官をしている。ところが、イーサンの教え子が武器商人の組織に捕まってしまい、これを助けるために現場復帰するという設定だ。イーサンがコンビニの「セブン・イレブン」に「氷」を買いに行き、そこで売っている「コダック」のカメラで詳細情報を得る。このシーンはなかなか興味深い。コンビニはもともとアメリカの「氷」の小売店から始まったもので、それを日本が凌駕したものだ。カメラは、アメリカで写真と言えばコダックという象徴的なブランドである。だだ残念なのは、一作目でジム・フェルプスが死んでしまったので、お決まりの「おはよう、フェルプス君」が見られないことだ。

昭和40年代のテレビ番組で人気だった「スパイ大作戦」は全部で171話放送されたそうだ。IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)というのは、政府から指令を請け負う民間の秘密機関である。その冒頭は余りにも有名だ。マッチの火が導火線につけられ燃えていく、バックにはあの“テーマ曲”が流れる。大平透さんの声で「おはよう、フェルプス君」で始まり、状況説明がある。「さて、君に与えられた使命だが・・・」と実行不可能(インポッシブル)な任務(ミッション)の指令が下る。「例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、或いは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る」。指令が終わると白い煙が出てテープは消滅する。そして、任務遂行のための高い特殊能力を持つメンバーが集められる。選ばれたエージェントは「知力・体力・時の運」見事なチームワークで作戦を完遂する。

メンバーは何度も替わったが、記憶に残るメンバーと役割は次の通りだ。リーダーのジムは新シリーズでも登場した。ローランは変装、これがあると何でもありの世界になる。シナモンは知力と美貌、声は山東昭子さんだった。バーニーは電子工学。新シリーズでは、実の息子さんが演じていた。ウィリーは力持ち。彼らの作戦は、大体においてターゲットを「罠」にかけるやり方だ。言葉は悪いが、究極のペテン師たちだと言える。その手口は実にあざやかでスマートだ。最後は、作戦の全容を理解し茫然自失状態のターゲットをしり目に撤収する。映画版の三作品は、トム・クルーズの「007」といった雰囲気だが、それでも今回バチカン潜入部分は、チーム力が生かされ、テレビシリーズの雰囲気を感じさせる。コンパクト(化粧道具)に仕込んだカメラで撮影した人物を、即座にその裏で変装マスク作るところなど彷彿とさせる。これこそスパイ大作戦になくてはならないシーンだ。

「スパイ大作戦」は、指令をあくまでもビジネスとしてクールに遂行するのが基本。しかし、映画はトム・クルーズというトップスターを主役にした事で方向性が変わってしまった。今回の映画は特に、「教え子を失った」とか「妻を拉致された」とか感情で動くという展開に首をかしげる。第一、沈着冷静、一瞬の迷いも許されない現場に、教え子の救出という感情がからむ任務での復帰はありえない。疑問を持つシーンは他にも多々あった。与えられた時間は48時間なのに、上海の場面に切り替わったら、あと2時間しかなかった?一番重要と思われる「ラビット・フット」を上海のビルから盗むシーンが、全くなかったのは何故?本当ならここが一番の描きどころと思うのだが。そもそも命をかけた「ラビット・フット」って何だったのか?まあ、これはシナリオの問題として、ここはひとつトム・クルーズの身体を張った“ど迫力”のスピードとアクションを大いに楽しむことにしよう。



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STORY
監督:J.J.エイブラムス 
出演:トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン
現場を引退したイーサン・ハント(トム・クルーズ)はIMFの教官となり、後進の指導にあたっていた。看護師のジュリア(ミシェル・モナハン)との婚約パーティーの最中にIMFから電話で呼び出される。指定されたセブンイレブンには上司のマスグレイブ(ビリー・クラダップ)が表れる。マスグレイブは、イーサンの教え子のリンジー(ケリー・ラッセル)が、武器商人・デビアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)に捉えられたことを告げる。救出作戦を行うため、その指揮をとって欲しいと、イーサンの現場復帰を要請する。詳細はそのコンビニで購入したコダックのカメラで知らされる。さて、敵との激しい戦闘の末リンジーを救出する。ところがリンジーの頭の中には小型爆弾が埋め込まれていた。敵の執拗な攻撃をかわしながら、ヘリで脱出に成功するものの、爆弾の回路を焼き切る前にリンジーは死んでしまう。・・・・
昭和40年代放映されたテレビのシリーズ「スパイ大作戦」の中で、今でも忘れられないシーンがある。それは任務遂行の手段に「猫」を使った話だ。部屋の中央に、ターゲット(宝石のようなもの?)があり、それを盗るために猫を使う。部屋の端から猫が渡れる幅の板を架ける。猫が盗ったものを引きずりながら、板の上を帰ってくるのだが、“ハラハラ”手に汗握って観た。ハイテクで、あざやかに盗むのもいいが、こういうのがかえって記憶に残るものだ。