映画「 ロード・オブ・ウォー 」
FileNo.060113

随筆のページへ

映画のページへ

トップページへ

この映画には「史上最強の武器商人と呼ばれた男」という副題が付いている。法律をかいくぐり裏の世界で暗躍する武器商人を描いたものである。緊張感の途切れない展開で、一気に観終わった2時間だった。冒頭、映像は銃弾のたどる道程を追う。工場で生産・箱詰めされ、港から輸出される。最前線に届いた弾は銃にこめられ標的を狙う。その標的がまだ“幼い子供のひたい”というのが象徴的だ。主人公ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は実在の人物ではないが、実存する5人の大物武器商人から作り出したモデルと言うから限りなく現実に近い。人物だけではない。「映画の出来事のほとんど全てに実例がある」と監督が言っている。武器商人がクローズアップされたのは、1991年のソ連崩壊後だそうだ。映画の中でも「冷戦の終わりは、熱い商戦の始まり」と言っているように、冷戦終結は武器商の環境を一変させたという。その稼ぎ頭はソ連製自動小銃AK47カラシニコフ。武器商人のメイン商品で、第3世界でテロや内戦に使われている。

ユーリーは、ウクライナ軍の将軍である叔父と共謀し、禁輸措置に違反する武器をリベリアをはじめ戦時下にあるアフリカの国々へ売りさばく。現実問題、アンゴラ・モザンビーク・ソマリア・コンゴ・ザイールなど、アフリカ諸国の紛争は枚挙に暇がない。特にルワンダ内戦で大量虐殺は皆が知るところである。当時、虐殺の計画が進む中、ルワンダ駐留の国連軍は武器を隠した倉庫を把握していた。しかしニューヨークの国連本部は武器倉庫へ踏み込む権限を与えなかった。西側諸国も単なる部族間の争いとして手を差し延べなかった。わずか100日間に80万人の犠牲者を出す大虐殺となった。戦争犠牲者の90%が銃によるものだ。映画では、リベリアの難民キャンプを見下ろす丘で、ユーリーが武装勢力と商談をする。この武器を売れば、目の前の難民が虐殺される。しかし、売らなければ自分の命がない。「需要があるから供給するだけ」などと言える状況ではない。売るも地獄、売らぬも地獄。武器商人とはこんな商売なのである。

先月(0512月)、アメリカのブッシュ大統領は「イラク戦争の根拠とした情報(大量破壊兵器を存在)の多くが間違いだった」と認める演説をした。ところが、根拠は誤りでも戦争自体は間違っていないと主張する。イラクの現状は、治安の悪化に歯止めはかからず、アメリカ軍の犠牲者は2000人を超した。コストは当初の見通しを大幅に超しそうだ。泥沼状態で出口の見えない現状に、アメリカ国内の世論の半分はイラク撤退を叫ぶ。ベトナム戦争末期と似ていると言われる。民主主義を押し進めるという大義名分も、いまや振り上げた拳をどう下ろすかに悩んでいる。ラムズフェルド、チェイニー、ネオコンといった取り巻きでは当然戦争へ突き進む。と言うより歴代の大統領は皆、戦争に関わってきている。20年ほど前、オリバー・ストーン監督の「サルバドル」という映画があった。カメラマンを通して内戦を描いたものだが、映画の中で大統領に当選したレーガンが「中南米の共産化を食い止めよう」と演説する。

その映画(サルバドル)の中で主人公ボイルが大使に向かってまくし立てる「ベトナムの失敗にこりてないないらしいな。1億2千万ドルも注ぎ込んで戦争ごっこか。第2のベトナムは見たくない。人民が苦しむ。アメリカも非難される。俺は身体を張って取材した。金のためじゃない。国を信じたからだ。今でも信じている。憲法やあらゆる人民の人権を守るべきだと思っている。人民第一に考えろ。アメリカ人として恥じない、良識に基づいて、ここを正義の国にしろよ」。20年を経ても、今現在にそっくり当てはまる言葉に驚く。しかし現実は違う次元で動いているように思う。世界各国の国防費を比較すると、アメリカが突出している。国防費だけではない。武器の輸出額でも他を圧倒している。アメリカ経済の重要な部分を占めているのである。アメリカにおける「戦争」は、経済の歯車の一つと言ったら言い過ぎだろうか。インターポールに捕まったユーリーがこう言う。「最大の武器商人は、君たちのボス(大統領)だ」。

随筆のページへ 映画のページへ トップページへ


STORY
監督:アンドリュー・ニコル
出演:ニコラス・ケイジ、 ブリジッド・モイナハン
ソ連・ウクライナに生まれたユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は少年時代アメリカに家族で移住した。ある日、ユーリーにとって運命的な日が訪れた。ギャング同士の銃撃戦を目撃したのだ。これを見た瞬間、武器を必要としている人に提供する武器が自分の売る武器でもいいはずだということに気付く。執ようなインターポールの刑事に追われながらも、ユーリーは銃の密輸入に天才的な能力を発揮する・・・・。
アメリカの諜報機関は、200人〜300人の武器商人を把握しているという。だが、捉えるためではなく利用するためのようだ。武器商人たちは、戦争の兆候に敏感に反応する。兵器を必要としている武装勢力などと渡り合って商談を成立させるわけだが、当然商談の段階で相手の軍備状況などを把握できる。これこそ諜報機関が最もほしい精度の高い内部情報である。今回の映画では、このあたりは描かれていないが、オリバー・ストーン監督の昔の映画「サルバドル」にはこんなシーンがある。セジューラ(身分証明書?)を欲しがるボイルに「ゲリラにニカラグアから武器が渡っているらしい。証拠写真を撮ったら優遇するぞ」と持ちかける。更にゲリラと会った後「銃はほとんどが旧式だよ」というボイルに「ミサイルは?」「無反動ライフルは?」と矢継ぎ早に質問する。つまりこのような事が、武器商人と諜報機関とのあいだで常識的に行われているのだろう。


2003年 単位100万ドル
国防支出総額 武器取引の主要輸出国
アメリカ 404,920 1 アメリカ 13,648
2 ロシア 65,200 2 イギリス 4,700
3 中国 55,948 3 ロシア 3,400
4 フランス 45,695 4 ウクライナ 1,500
5 日本 42,835 5 フランス 1,200
6 イギリス 42,782 5 ドイツ 1,200
映画パンフレット記載より(英国際戦略研究所、ミリタリーバランス2004-05)

平成18(2006)年1月8日 西日本新聞
ヒュー・トンプソン氏死去=ベトナム戦争虐殺防ぐ
がんの為死去。62才。ベトナム戦争下の68年3月16日陸軍のヘリコプター操縦士としてヘリ操縦中、当時の南ベトナム・クワンガイ省ソンミ村で住人500人以上が犠牲となった米軍によるソンミ虐殺事件を上空から目撃。米軍と住民の間にヘリを着陸させて、米兵でありながら米軍側に銃を向け虐殺行為を中断させた。更なる犠牲を防いだほか、負傷した子供らの救出に尽力した。功績は一般に知られていなかったが、98年に陸軍から戦闘行為以外の勇敢な行いに贈られる勲章としては最高位の「軍人勲章」を授与された。



平成18(2006)年1月12日 西日本新聞
チベット「虐殺」審理
スペインの報道によると、マドリードにある全国高裁は10日、中国によるチベット支配で多数が殺害されたとして、中国江沢民前国家主席や李鵬元首相ら3人を人道に対する罪などで告発した非政府組織の訴えについて審理入りを決めた。告発したのはマドリードにあるNGO「チベット支援委員会」など。
中国がチベットを統一下に組み入れた1951年以降、100万人以上のチベット人が殺害されたり行方不明になったりしたと主張している。スペインの法律は人道に対する罪に対して、外国で行われた場合でもスペインで裁くことを認められている。

追伸:平成18(2006)年2月7日 西日本新聞
(07年度予算教書)米国防費・4393億ドル・・・6.9%増、対テロ重視継続
ブッシュ米大統領は6日、2007会計年度(06年10月〜07年09月)の予算教書を連邦議会に提出した。本土防衛や対テロ戦を軸にした安全保障を重視する政策を継続する結果、国防関係費は約4393億ドルで前年比6.9%増の高い伸びとなった。
国防総省は6日に議会へ提出する報告書「四年ごとの国防戦略見直し」(QDR)に基づく改革のため、予算増額を要求。国防関係費のい中でも兵器調達は842億ドルと前年比10.4%増の高い伸びを確保する。

追伸:平成18(2006)年6月27日 西日本新聞
国連小型武器会議が開幕
 [ニューヨーク26日共同] 自動小銃などの不法取引防止策を話し合う国連小型武器再検討会議が26日、国連本部で開幕した。2001年の前会議で採択した行動計画の履行状況を点検するのが目的。今後の課題となる仲介業者規制に関する政府専門家会合が今年11月に初めて開かれることを歓迎、最終日の7月7日に次期取り組み目標を盛り込んだ政治文書(最終文書)を採択する。
 小型武器の威力は核など大量破壊兵器と比べるとはるかに小さいが、日常的に使われ民間人を含む多数の犠牲者を出していることから「十分に大量破壊兵器と形容できる」(アナン国連事務総長)。会議はこうした実態を踏まえ、不法取引防止への国際社会の決意を確認する場となる。
 会議には各国政府や国際機関、非政府組織(NGO)などから約2000人が参加。小型武器問題を主導してきた日本政府からは伊藤信太郎外務政務官が出席、小型武器の移転管理についての国際基準確立の必要性を26日の各国演説で訴えた。
 国際社会が取り組むべき方策を初めて定めた行動計画のうち、武器に刻印するなど製造国・業者を特定追跡するための規範はまとまり、今後の重点は政府・業界団体に登録せず暗躍する「武器商人」ら仲介業者の規制に移る。
小型武器
 自動小銃や短銃など一人または数人で携行、使用できる武器の総称。スイスのジュネーブ高等国際問題研究所が発行する「小型武器概観」によると、2003年に世界で起きた戦闘の犠牲者数(8万〜10万8000人)のうち、60〜90%は小型武器の犠牲。安価なため反政府武装勢力や犯罪組織への流出などが問題化している。

先ほどから、テレビでは「ライブドアの堀江社長逮捕」で緊急特番を放送している。一週間前、東京地検の強制捜査が入ると株式市場は二日間で日経平均1000円近くも下げる大変な反応を見せた。今日も全面安で日経平均15360円、前日比336円安で引けている。この数ヶ月、ほぼ一本調子で上げてきたが、まさに「ライブドア・ショック」である。ライブドア株は、時価総額は7千億円を超していたという。その株も連日のストップ安となり、逮捕となれば上場廃止になるかもしれない。風説の流布や、一株を3万株に分割するなどで株価を吊り上げたようだが、所詮「砂上の楼閣」だった。株価上昇局面でありながら、株取引がいかにハイリスクであることかを教えてくれる事件だ。

近時、個人投資家がインターネットで激しい売り買いをやっている。今回のショックで相当の損失を被った人も多いことだろう。聞くところによると、一日の中の売買で数円の値上がり益を取るそうだ。昔なら、その道のプロしかやっていなかったようなことである。多くの個人投資家の参入は、市場の活気という点で悪いことではない。だが、私はそのあり方に少々疑問を持っている。私が株取引に興味をもったのは、もう30年も前のことである。いまも8銘柄で資産運用をしている。数年前、証券会社からインターネットで取引をしないかという誘いが何度もあった。しかし、簡単に売買が出来るようになると、必ず頻繁にやりたくなるのが人情である。素人が激しく売り買いをやると、失敗の可能性は高い。これは私の昔からの考えである。今もインターネットでの取引はやっていない。

3年前スタートした「確定拠出年金」401Kでは、私は全額を「国内株式」での運用にした。ベンチマークはTOPIXで当時870ポイントくらいだった。ほとんど底値と思っていたが、その後かなり長く低迷した。年金でもあるし、景気の底で仕込んで放っておくのがよい。株から一旦離れて、頭を冷やすくらいの余裕がないといけない。それが今では70〜80%の値上がりをしている。例えば、500万円の投資なら900万円まで値上がりしているのである。今回の日経平均が1000円下落したところで、どうということもない。株式市場はハイリスクではあるが、ギャンブルの場ではない。会社の業績や業界の動向、市場全体の動きを見極め、地に足の着いた取引をしたいものだ。
随筆のページへ トップページへ