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FileNo.070609

先月、やっと国民投票法が成立した。主権者である国民が、憲法について真剣に考える場が設けられた。今度の選挙では、年金問題で改憲の陰が薄くなりそうなのが残念だ。改憲の最も重要なポイントは、第9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」である。敗戦直後、日本は天皇制の存続で国体護持を願い、GHQは天皇制の存続で日本を混乱なく掌握したいという一点で合意し、日本は“戦力の不保持”を受け入れた。と言うより、敗戦し占領下ではものも言えない状態であったろうし、国民は明日の食料をどうするかが重要だったろう。その日本も今や、世界第2位の経済大国になり、自衛隊は世界の誰もが認める軍隊となった。湾岸戦争では国際社会の一員として、世界に受け入れられる常識も必要という教訓を得た。敗戦直後に日本の無力化を謀った憲法は変えて当然である。

先日、福岡県弁護士会主催の「憲法講座」を聞きに行った。6回シリーズで、1回目「市民生活と憲法」2回目「平和と憲法」が終わったところだ。この講座はディベート方式で進められ、改憲派、護憲派の弁護士がそれぞれの立場で主張し、その後聴講の人も交えて論争するというものだ。この講座で、護憲派がどう考えているかが分った(ような気がする)。結論を言えば“夢見る夢子さん、夢男さんたち(護憲派)”の住むユートピアは、改憲派のいる現実世界とは全く別のパラレルワールドに存在し、永遠に交わることはないと思われる。一例を挙げれば「現状があるから憲法を変えるべきなのか」については、“憲法はもともと国の向うべき理想を掲げたカタログであるから、現状にあわせて憲法をかえるべきというのは理由がない”“むしろ現状を憲法に近づけるべき”と言う。土俵が違えば、相撲は取れない。意気軒昂(いきけんこう)なれど戦意喪失。

日本を取り巻く状況を見渡せば、北朝鮮のミサイルや核実験、中国の異常な軍事費の増大や尖閣列島の問題、台湾問題も微妙だ。いくら中国の首相がにこにこ笑顔を振りまいても、ミサイルは日本に照準を合わせている。利用価値がなくなれば、あっという間に態度は変わる。ロシアのサハリン2がそのいい例だ。植木等ではないが「貢いだあげくが、はいそれまでよ〜」である。過日、国連講演会を聞きに行ったとき講師(外務省)がこう言っていた。「所詮、世界は腹黒い。キツネとたぬきの化かしあい」。そんな情勢の中にあって、基軸になるのはやはり日米同盟である。憲法で軍隊及び集団的自衛権を認め、同盟の強化を図らねばならない。安倍首相の提議する“4類型”は国際的には常識だ。その一番目などは、恐らく現場の自衛隊員は後々罰せられるのは覚悟の上で、攻撃するのではないだろうか。もちろん「はい、それまでよ」はアメリカと言えども例外ではない。その可能性も視野に入れて国家の戦略をたてることが対等で真に強い同盟関係をつくる。

ラジオで日曜夜8時から林田スマさんの「サンデー・スィート・ショップ」という番組を放送している。その中でスマさんが加藤諦三著「嫌われたくない症候群」という本を紹介していた。“目次を読んだだけでもある程度分るでしょう”と番組では目次だけの紹介だったが、今の日本に当てはまる部分が大いにあることに驚いた。現状をみるに、中国の東シナ海ガス田、知的財産権への対応は如何なものか。北方領土はロシア外相これ見よがしの3島訪問、日本の北方漁業は殺され損に拿捕され放題。「嫌われたくない症候群」の中にはこう書いてあるという。「コミュニケーションが苦手な“ことなかれ主義”」「感情にふたをして問題解決を遅らせる」「うまくしようといい顔をする」きわめつけは「対立を恐れる人は自立していない人」。すなわち「対立を恐れる国は自立していない国」となる。自立した国への第一歩は、まず憲法をきちっとすることだ。

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平成19年(2007年)6月12日 西日本新聞
 [ 集団的自衛権 ] 米艦 防護容認が大勢
有識者会議「解釈変更を」
 集団的自衛権に関する政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)第二回会合が11日夕、首相官邸で開かれた。公海上での自衛隊艦船による米軍艦船防護の可否について検討した結果、政府が従来は憲法解釈で禁じてきた「集団的自衛権行使」と位置付けた上で、実施可能にすべきだとの意見が大勢を占めた。
 これにより同懇談会は今秋まとめる報告書で、少なくとも米艦船防護に関して、集団的自衛権行使を容認するため憲法の解釈変更や改正を求める方向となった。
 安倍晋三首相は冒頭で「相互信頼なくして同盟関係は成り立たない。日米同盟の重要性の観点から今回のテーマを検討することは極めて有益だ」と強調した。
 会合では、公海上において日本の自衛艦が直接攻撃を受けていないにもかかわらず、近くで活動する米艦船が攻撃された場合に反撃できるか否かを議論。政府は従来、憲法解釈で可能とする「個別的自衛権行使」などで反撃できるとしてきたが、メンバーからは「個別的自衛権の拡大解釈では国際的に受け入れられない。集団的自衛権でないと説明できず、政府見解は限界に来ている」との意見が多く出された。
 また「自衛隊法95条の武器等防護による規定で防護できるかは、現場で判断できない」として、どのような場合に反撃できるかを事前に検討しておく必要があるとの意見や、集団的自衛権行使の相手国に米国のほかオーストラリアも入れるべきだとの指摘もあった。