葛根湯(かっこんとう) 随筆のページへ

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File No.051203
先月中旬、風邪気味で10日間ほど外出も控え養生した。症状は微熱とセキで寝込むほどではなかった。我が家の“風邪薬”の定番は漢方薬の「葛根湯」と「麦門冬湯」である。いつも常備している。直近でそんなこともあったので、新聞のイベント欄に福岡県薬剤師会主催の「くすりのセミナー福岡」というのが目にとまった。「インフルエンザと薬」「風邪には葛根湯?」、タイミングのいいテーマである。ちょっと聴いてみようかと今日行ってきた。我が家の定番「葛根湯」は古い中国のノウハウ本「傷寒論」にも載っているいい薬のようだ。だが、聞けば風邪に使用する漢方薬は、症状にあわせて20を超えるほど色々ある。「麦門冬湯」もその中の一つだった。漢方薬とは何かという話では「経験的に使用されたものが理論付けられ、合理的に使用できるもの」ということだそうだ。驚いたことに、理論的な裏付けはあるものの「不適合な使用は死ぬことがある」という。「トリカブト」なども使うというから、民間薬とは違う。

もう一つの話は「インフルエンザ」だ。近時あらゆるメディアで新型インフルエンザが取上げられている。日本でも最悪のケースでは64万人が死亡する可能性があるという。この対策として抗ウィルス薬「タミフル」を2500万人分備蓄する方針である。この薬の副作用で死亡のケースもあるようだが、因果関係は不明としている。新型は数年前に流行した「SARS」より感染力が強く、50%の死亡率が懸念されている。新型流行は時間の問題という状況からすれば、多少の副作用は致し方ないだろう。薬に副作用は付き物であり、タミフルに限ったことではない。さて、話の中にインフルエンザと普通の風邪とはどこが違うのかという話がでた。症状もさることながら、原因がウィルスによるか細菌によるかの違いだそうだ。最後の質問コーナーでは「ウィルスと細菌はどう違うのか?」という質問が出た。違いは細胞膜を持っているかどうかで、細胞膜を持っている細菌は細胞を攻撃してやっつけることが出来るが、細胞膜を持たないウィルスは困難という。

人間はそういうウィルスに、免疫力で対抗する。人間の身体は実によく出来ている。手術が出来るのも「身体が自分の傷を自分で治せるからだ」と聞いたことがある。人間には治癒力というものがある。先日、政府は医療制度改革大綱を決めた。大きく分けると「医療費の抑制」と「生活習慣病の予防」である。生活習慣病の予防については、患者を減少させることによって医療費を抑制しようというものだ。正しい生活をすることで、人間が本来持つ回復力・治癒力が正しく機能する。中でも食事のあり方は重要である。今年6月「食育基本法」が成立した。その中には「食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである」と謳っている。食事の内容が欧米型化してきているが、本来日本人の持つ遺伝子には合っていないという。医食同源、患者減少による医療費抑制には相当の時間を要する。

しかし、ことは急を要している。医療給付費は、20年後の2025年度には約2倍の56兆円になるという。しかも、その中でも高齢者の医療費は相当部分を占める。高齢化社会は急速にやってくる。70才から74才は現在の一割から二割へ引き上げられる。医療費の自己負担が増えるのもやむをえないだろう。あえてその痛みを受け入れなければなるまい。一方では、診療報酬の引き下げも検討される。一部には、世界的に見て診療報酬の水準は決して高くないとの意見もあるが、無駄があれば省かねばならない。当然、抵抗は予想されるが、みんなで痛みを分かち合うのは当然だ。そもそも今のシステム自体に問題がある。検査をすればするほど、薬を出せば出すほど利益が上がるという構造が問題だ。今回かなり大幅な引き下げが見込まれているが、システムの構造改革の方も急務だろう。今回のセミナーでは、セミナー終了後個人的な相談にも応じられていた。年4回開かれているそうで、次回は2月に「スギ花粉症」をテーマに講演会がある。興味のある人は行ってみてはどうだろう。



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追伸:平成17年12月11日 西日本新聞

診療報酬改定、薬価・材料で1.5%下げ・・・・全体下げ幅は3%台か

政府、与党は十日、公的医療保険から医療機関や調剤薬局に支払われる診療報酬の来年度改定で、薬の公定価格である薬価を最低でも1.3%引き下げ、医療材料の公定価格の0.2%引き下げと併せ、最低でも1.5%以上のマイナス改定とする方針を固めた。これにより、医療費の国費負担は最低でも1130億円が圧縮される。医師の技術料などに当たる本体も引き下げられる。下げ幅は今週中にまとまり、診療報酬全体の改定率が決定する。

薬と医療材料の価格は、診療報酬改定で定めた公定価格と市場価格の価格差が次の改定に反映される。少なくとも過去15年間は市場価格の方が安かったため、ほぼ2年に一回の改定の度に引き下げられてきた。

厚生労働省が今年9月に実施した価格調査でも、市場価格の方が安く、その価格差は薬が8.0%、医療材料が11.4%で、これを基に来年の改定時の最低ラインのマイナス幅を導きだした。

報酬全体の下げ幅は3%台が交渉のベースとなると見られるが、社会保障費の圧縮幅をめぐっては財務省と厚労省で最終調整がついていない。圧縮額の規模によっては、来年4月の同時改定となる介護報酬も引き下げられる可能性が高い。

診療報酬 医療行為や調剤に対し、公的保険から医療機関や調剤薬局に支払われる公定価格。ほぼ2年に一回改定される。前回の2004年度は薬価が0.9%、医療材料が0.1%引き下げられたが、医師の技術料などにあたる報酬本体は据え置かれた。前々回の02年度に初めて本体が引き下げられ、薬価1.3%、医療材料0.1%の引き下げと合わせ、全体ではマイナス2.7%と最大の下げ幅となった。次回改定は来年(06年)4月。改定率は政府が年末の予算編成過程で決め、年度末までに厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会が報酬の内訳を審議、厚生労働相に答申する。
追伸:平成17年12月19日 西日本新聞

診療報酬3.16%下げ・・・・下げ幅過去最大
国庫負担 計2850億円圧縮

政府、与党は18日、公的医療保険から医療機関や調剤薬局に支払われる診療報酬を来年度に3.16%引き下げることを決めた。下げ幅は過去最大で、医師の技術料などに当たる本体部分が1.36%、薬価が医療材料を含め1.8%。本体の引き下げは、初めて引き下げられた2002年度のマイナス1.3%以来。同年度の全体下げ幅は2.7%で、今回はこれを大きく上回った。介護保険からサービス事業者に支払われる介護報酬も来年4月から0.5%引き下げることが決まった。

他の医療制度改革とあわせ、計約2850億円の国庫負担圧縮となる。これより、来年度から始まる医療制度改革の内容が出揃った。日本医師会などは診療報酬の引き上げを求めていたが、今月1日の改革大綱で、高齢者を中心に患者の窓口負担の引き上げが決定。医療サービスを提供している医師にも、膨張する医療費の抑制に向け「痛み分け」を求める形で決着した。来年度の国庫負担圧縮額の内訳は、診療報酬約2400億円、介護報酬約100億円、高齢者の負担増など、他の医療制度改革による実質的な抑制効果が350億円。

診療報酬本体の下げ幅をめぐっては、小泉純一郎首相が02年度より大きくするよう指示。安部官房長官、谷垣財務相、川崎厚生労働相と自民党の中川政調会長が18日に協議し、02年度を0.06%上回ることで合意した。川崎厚生労働相は決着後の記者会見で、診療報酬について「財政問題があるのは事実だが、医療の質をきちっとしなければいけない。ぎりぎりの調整の結果だ」と述べた。

医療費など社会保障費は現行制度で推移した場合、来年度に8千億円程度の自然増が見込まれていた。これに対し財務省は8月の概算要求基準(シーリング)で、2200億円の圧縮を要求。さらに小泉首相の新規国債発行の抑制指示を受け、圧縮額を5千億円とし、診療報酬の4〜5%の大幅引き下げを迫っていた。

族議員消え「円満決着」 診療報酬引き下げ幅は18日、財務省と厚労省の綱引きを官房長官が裁く形で決着した。薬価を除く医師の技術料など、本体部分の下げ幅は、財務省の当社の主張よりずっと小幅だが、同省がこだわった「過去最大の下げ幅」の面目は保たれた。医師不足の小児科や産科への配慮を求める厚労省の主張も一部考慮された格好で、財務と医療、両者の顔がたつ微妙なさじ加減で落着した。