映画「ダイ・ハード4.0」を観て
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「ダイ・ハード3」から12年。“世界一ついてない男”ジョン・マクレーンが帰ってきた。今ではニューヨーク市警総合テロ対策班に所属するベテラン警部補だ。全米は独立記念日の週末を迎え浮かれている。そんな中、ワシントンFBI本部サイバー犯罪部のモニターが一瞬消えた。“デジタル時代のハト時計”究極のローテク男、久々の起動である。テロの首謀者は、元国防総省インフラセキュリティ部門のチーフ・プログラマーだったガブリエル。そのターゲットは国のインフラすべてに対する攻撃を意味する“ファイヤーセール”である。交通・電気・ガス・水道・通信がマヒ、メディアも制圧され、最後は国が最も恐れるアメリカすべての財産である金融情報の消滅だ。アメリカが石器時代に逆戻りの危機に直面する。マクレーン警部補が知力・体力の限界に挑み、時の運まで引き込んで懸命に阻止する。ダイ・ハード男マクレーンに、テロリストがこう言う「まだ生きていたのか!」。

今回マクレーン警部補は、アメリカ東部を走り回る。その行動を追ってみた。まずニューヨークの南50km
@ニューブランズウィックという街からスタートする。ここはルーシーの通う大学がある。ここから南100kmほどフィラデルフィアの近くAカムデンに住むハッカーのファレルを重要参考人としてBワシントンまで連行するように指令がでる。混乱のワシントンの次は、アメリカ東部のエネルギーのハブがあるCミドルトンという町(ウェスト・バージニア州)だ。ここは、ワシントンから西へ500kmほどのところにある。ここからファレルが天才ハッカーのワーロックの助けを借りるためにワシントンの北50kmほどのDボルチモアへヘリで飛ぶ。そしてクライマックス、ボルチモアの西にあるEウッドローン(メリーランド州)へ行く。ここにはアメリカの金融データのバックアップをとっているデータ局があるが、それより娘ルーシーが人質になっている。今回の活躍の場は、前三作と違って随分広範囲に及ぶ。(番号は下の地図に対応)

インフラへのダメージは何も映画の中だけではない。日本の身近な例を挙げれば、丁度1年ほど前の首都圏の大停電を思い出す。旧江戸川に架けられた送電線にクレーン船が接触し、140万世帯に影響が出た。このときの新聞の見出しは「断線1カ所で大混乱」だった。2年前には東京証券取引所のシステムプログラムの欠陥で売買が全面停止となり、「市場の空白3時間」という事件もあった。このときの見出しは「東証・取引不能、ハイテク売買にもろさ」だった。いづれも、非常に単純なミスで深刻な事態を引き起こしている。1年ほど前、証券会社から「株券の電子化について」というパンフレットが届いた。もし手元に株券の現物があれば、電子化しないと2009年6月に紙切れになる。電子化された株券は、各証券会社が「保管振替機構」に預託し管理される。つまりそこは日本の財産の重要な場所になる訳だ。くれぐれも、“本体とバックアップが同時にテロの標的になるなど「想定外だった」”なんてことのないように願いたいものだ。

「ダイ・ハード1」の冒頭、ホリーが自宅に電話をしたとき「ルーシー・マクレーンです」と電話にでる幼い子供が19年を経て今や美人女子大生に成長している。その間マクレーンは、ホリーとは離婚。ルーシーも今は“ルーシー・ジェナロ”と母方を名乗り、父マクレーンにはまともに口もきいてくれない。しかし、マクレーンの血は、その向う気の強さに確かに引き継がれている。マクレーン警部補の娘として人質になっているにも関わらず、ガブリエルに「表に出なさいよ。相手になるわよ」と啖呵を切り、更にマクレーンに娘の声を聞かせようとすると「パパ、敵は5人よ」とテロ集団の情報を教える。受け継いだ気質は、父からだけではない。母ホリーも「ダイ・ハード1」で、ハンスに人質として金庫室に連れてこられたとき「偉そうに気取ってたけど、ただの泥棒だったのね」と、こちらも引けを取らない。この両親にしてこの娘あり。今回の映画は、娘ルーシーの存在がいい味をつけている。

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尚、CミドルトンとEウッドローンの位置は推定です。
STORY
監督:レン・ワイズマン
出演:ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング
独立記念日の週末を迎え、アメリカは浮かれていた。そんな中、ワシントンのFBI本部のモニタが一瞬消えた。ただちにシステムチェックした結果、どうやらハッキングされたようだ。ただならぬ事態に緊急でハッカーのチェックをはじめた。
一方、アメリカ各地にいるハッカーたちが次々と消されていた。FBIからの要請で、ニューヨーク市警総合テロ対策班マクレーン警部補は、ハッカーのマット・ファレルをFBIに連行するよう指令を受ける。マット・ファレルもまた、テロリストのソフトを組み上げ、消されようとしていた。
マットのアパートではすでにテロリストの傭兵が、まさに襲撃しようとしていた。マクレーンの活躍でマット・ファレルを保護、ワシントンへ連行する。しかし、ワシントンはすでにテロリストの掌中にあり、信号機の操作で、混乱し大渋滞になっていた。次々におこるインフラへの攻撃に、FBIもファイヤーセール(国のインフラに対する組織的なサイバー攻撃を意味する)であることに気づく。