映画「ダイヤモンド・イン・パラダイス」を観て
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007を降りて第一作のピアース・ブロスナンがまるでアルセーヌ・ルパンのような天才的大泥棒を演じる。天才的という設定とはいっても、逃げるとき銃弾を受けたり、見つかって慌てて逃げたり、FBI捜査官とホモの疑いをかけられたりと、今いちスマートさに欠けるところもあるコメディだ。どこまでも青く透き通ったバハマの海、空を真っ赤に染める夕日に、華麗なる大泥棒とボンドガール風美女、そこに100万ドルの宝石とFBI捜査官が絡む。完璧なアリバイや、あっと驚く逆転劇が用意されているが、ストーリーはいたって単純なので、リゾート気分で楽しめる。ブロスナンは無精ひげにラフなシャツという出で立ちだが、強烈な007のイメージは消しようがない。「サンダーボール作戦」をほうふつとさせる水中シーンをはじめ、映画自体にも007のイメージを感じたのは私だけだろうか。偶然にも現在、21作目の新作007「カジノ・ロワイヤル」がこの映画の舞台バハマで撮影中らしい。

世界に3つしかない“ナポレオン・ダイヤモンド”。7年前その一つ目を盗んだマックス(ピアース・ブロスナン)は、冒頭二つ目を盗むシーンから始まる。プロバスケットNBAの「ロサンゼルス・レイカーズ」の試合を観るマックス。余談だがこの映画は2004年作品なので、まだシャックのいたころのレイカーズだ。パートナーで恋人でもあるローラ(サルマ・ハエック)と共に、FBIの完璧な包囲網をしり目に盗みは成功する。このときマックスはFBIの銃弾を受けてしまうが、幸い一命はとり留める。半年後、マックスとローラは南の島の楽園で、最高に贅沢な日々を過ごしていた。ところが、そこに現れたFBI捜査官スタン(ウディ・ハレルソン)。この島に停泊する豪華客船「セブン・シーズ」に3つ目のナポレオン・ダイヤモンドが展示されていることを告げる。ダイヤモンドは当然、カメラやセンサーで厳しく守られている。スタンはマックスが必ず挑戦すると睨んで挑発する。「お前には才能がある。天性の才能だ。俺ならやめない」。

ところでこの映画は中州大洋で観た。久しぶりである。近時シネコンがほとんどの状態だが、その中にあって大洋劇場は何だか昔の匂いのする映画館だ。入社したころ会社が近いこともあって中州でよく映画を観た。昔の映画のパンフレットを見返して見るとフランク・シナトラとトレバー・ハワードの「脱走特急」に大洋映画劇場のパンフレットが挟み込んであった。1965と印刷してある。当時、大洋映劇は「湖月のカレー」とセットで楽しむのが定番だった。去年中州大洋の1F「キネマカフェ」に昔のままの「湖月のカレー」が復活した。大洋映画劇場60周年で復刻販売だそうだ。当時一日2000食も売れたというから根強い人気を保っているのもうなずける。田舎から出てきたばかりの当時の私には、都会の何もかもが初めての経験だった。初めて「お好み焼き」を焼いて食べたのも、初めて喫茶店でコーヒーを飲んだのも中州だった。カルチャーショック連続の中州だった。

さて、スタンの挑発は続く。「また君は、当然盗むつもりだろう」「誘惑から逃れるのは、屈するのが一番だそうだ」。永い付き合いで何だか友情さえ感じているスタンは「やつは挑戦を楽しんでいるだけ、芸術的な泥棒」とマックスを評価する。だが、愛するローラは危険な生活から足を洗って、この南の島の楽園で、静かに夕日を楽しむ生活を願っている。平静を装うマックスだが、“難攻不落”であるがゆえに心が動く。出航まで数時間、客船では「海底パーティー」の真最中。“盗んだら別れる”と最後通牒を突きつけたローラ。7年間追い続け逮捕に執念を燃やすFBI捜査官スタン。これにマックスを利用してダイヤを盗もうと画策するギャングが入り乱れてのバトルロイヤル。逆転に次ぐ逆転で最後に笑ったのは・・・・? エンディングでマックスはローラに告げる「君こそ命。僕の宝石は君だけだ。初めて買ったダイヤだ。結婚してくれ」。これに対しローラが放ったこの一言が最高だ。「レシート見せて」。

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STORY
監督:ブレット・ラトナー
出演:ピアース・ブロスナン、 サルマ・ハエック
ハイテクな小道具と天才的な頭脳を駆使していかなる財宝も盗み出し、また、完璧なアリバイも成立させることから「アリバイの王様」とも呼ばれているマックス・バデット(ピアース・ブロスナン)。恋人でありパートナーのローラ・シリロ(サルマ・ハエック)と共に、今度はナポレオンが所有したと言われる世界最大の3つの財宝“ナポレオン・ダイヤモンド”を狙う。緻密な計画と大胆な犯行で周りのものを欺き、見事二つのダイヤを手に入れることに成功した。
それから6ヶ月後、行方をくらましたマックスとローラは、スリリングな生活から離れてバハマにある情熱の島、パラダイス・アイランドでボートを楽しみ、ロブスター食べ放題の豪華な生活を過ごしていた。
一方、7年間にもわたって彼らを追い続けるも、常に翻弄されまくってきたFBI捜査官スタン・ロイド(ウディ・ハレルソン)も、パラダイス・アイランドを訪れていた。港に停泊している豪華客船に最後のナポレオン・ダイヤモンドが展示されていたからだ



トレバー・ハワードがなつかしい



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1965年(昭和40年)8月の映画「脱走特急」 1Fキネマカフェには懐かしい
「映画情報」も置いてある