映画
「デイ・アフター・トゥモロー」
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FileNo.040811
東京は、今日で真夏日が連続38日となり、新記録となったそうだ。東京都心では先月20日史上最高の39.5度が観測され、甲府の40.4度は史上2位の猛暑だった。福井の集中豪雨はそれまでの県の記録を書き換える被害をもたらし、新潟県や福島県の豪雨には「平成16年7月新潟・福島豪雨」と気象庁が命名したほどの被害だった。日本だけではないアメリカでは西部の森林火災、東部の暴風雨、中西部では竜巻に襲われ、フランスでは一転して冷夏に見舞われている。しかし、何と言っても私が驚いたのは日本近海で発生した台風である。台風10号のコースが東から西へというのもめずらしかったが、突然和歌山県の南で台風11号が発生した。どうも最近の猛暑で、海水温度が上昇し台風の発生する条件が整ったものらしい。これを異常気象と言わずして何と言う。「デイ・アフター・トゥモロー」はそんな異常気象がもたらす大自然の脅威を描いた映画である。

古代気象を専門とするジャック(デニス・クエイド)は南極で巨大な棚氷が崩壊するのを目の当たりにし、地球温暖化会議で、急激な温暖化が氷河期を招くと警告する。ジャックの推論はこうである。地球温暖化によって解けた極地の氷が海へ流れだす。それによって海水が薄められ、海流の循環に変化が生じる。これが地球の熱の循環を狂わせ、気候が急変するというものだ。そんな中、スコットランドのラプソン博士は観測ブイの温度が13度低下しているのに気付く。ところが、事態はジャックの予想をはるかに上回るスピードで進展する。ロサンゼルスを壊滅させるハリケーン。ニューヨークを襲う巨大津波。大自然が牙をむき凄まじい勢いで世界各地を襲う。後半、ジャックがニューヨーク図書館に閉じ込められた息子サムの救助をメインにストーリーは展開する。人類に残された時間はわずかしかない。壊滅する地球を、圧倒的な迫力で見せる映像技術がすごい。


映画では、北半球の北部が壊滅状態になるなか、ごく一部の人が生き残る。アメリカ南部の人はメキシコに逃れ、人類が絶滅することはなかった。だが、これが現実となる可能性を秘めているところに今日の深刻さがある。英オブザーバー紙がスクープした、ペンタゴンの内部文書では、「異常気象の脅威は、テロの比ではない。2020年まで続く未曾有の異常気象こそ、世界各国を苦しめる最も深刻な問題になるだろう。時期が前後することはあるにせよ、現実化することは防ぎようがない」というものだ。人間による地球の破壊は、自然との共存から、自然との闘いへと変わっていく。人類滅亡への要因は、自然の脅威だけではない。石油をはじめとするエネルギーの枯渇はすぐそこまで来ている。それにもまして、近年の合計特殊出生率の低下は何を意味するのか。種の保存は生物の本能であるはずだ。その本能を失った人類に明日はない。

地球が出来て46億年、人類の歴史がおおよそ400万年から500万年である。地球が出来て現在に至るまでを単純に1000日としよう。人類の歴史はその最期の一日だけということになる。わずか一日である。裏を返せば一日あれば知的生命体が出来上がるということだ。地球に残された余命は50億年、つまりあと1000日ある。すでに生命の土台は築かれているから、たとえ人類が滅びようと、一日あればまた新しい知的生命体ができる。過去、あれほどわが世を謳歌した恐竜が絶滅したように、地球上の生物は、絶滅を何度も繰り返してきた。一週間もあれば,浄化された新しい地球になっているだろう。その時代には、ゴキブリ型の新しい知的生命体が生まれ、博物館には人間が飾られているかもしれない。だが、考えてみれば地球にとって、知的生命体は招かれざる客である。一種が地球を制圧することが好ましくないのは、我々の時代で実証された。


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STORY
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:デニス・クエイド、 ジェイク・ギレンホール
二酸化炭素の大量排出に伴う地球温暖化が深刻化する中、古代気候学者のジャック・ホールは、自らの研究結果をもとに大規模な気候変動を予測し、学会で注意を呼びかける。それから数ヵ月後、世界各地が前例のない異常気象に見舞われる。巨大ハリケーンがLAを襲い、大津波がマンハッタンを呑み込む。ジャックの仮説が予想外の早さで現実となったのだ。ジャックは人々を南に避難させるよう合衆国副大統領に進言するが、政府は事態の深刻さを理解しない。やがて気温が急激に下降し始め、北半球は氷河期に突入してゆく…