映画「ザ・コア」を観て
随筆のページへ

映画のページへ

トップページへ


file-No. 030705

もうすぐ七夕である。多くの人が、願いをこめて笹の葉に短冊をつるす。西洋では、古代より星座が神話として語り継がれている。いずれも人間がいかに夢を持って、星空を見上げているかがよくわかる。夢があるといえば、先日、宇宙研としては最後となる、小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられた。惑星誕生時の状態が残るとされている火星の小惑星へ、4年がかり往復10億キロの旅となる。太陽系誕生の謎に迫るこの「MUSES(ミューゼス)-C」には、小惑星に落とすターゲットマーカーに、世界124カ国・地域から募集した88万人分の名前を刻んであるそうだ。更に、8月には5万7千年ぶりという火星大接近を控えている。いつもながら宇宙に関する話題には事欠かない。


ところが人類の「果てしない宇宙」への探求とは反対に、映画「The Core」は一転して、地球の中心に向かっての旅をえがくというめずらしい発想である。地底への旅と言えば、ジュール・ベルヌの「地底探検」を思い出す。中学生ころ、ベルヌの作品は夢中になって読んだものだ。主人公と学者であるおじさんが、アイスランドの休火山の火口から入って、5000キロに及ぶ地底旅行をするという物語である。ベルヌの作品は「80日間世界一周」「海底二万里」など夢のある作品ばかりだった。20世紀の科学は「ジュール・ベルヌの夢のあとを追っている」とまで言われている。ところが現実を見てみると、科学の発達した今でも足元の地球へは、掘り進むこと10数キロがやっとといった状態である。地球全体からみれば、ほんの表面の薄皮にしかすぎない。この映画はそんな地球の「コア()」への旅がテーマである。


地球は巨大な磁石になっている。地球内部にある溶けた熱い鉄とニッケルの液体合金の流れが電気を起こし、地球の周りに磁気圏(磁力が働いている空間(磁場))をつくっている。我々はこの磁気圏によって、太陽風の直射から守られているのである。ところが、何らかの原因で(映画では人為的な原因だが・・・)、流れが止まり磁気圏が消えると、地球上の全てが焼き尽くされてしまうことになる。「ザ・コア」では、一年以内に絶滅の危機に立たされた人類を救うため、6人のエキスパートが集められる。アウターコアの対流を、1000メガトン級の核爆弾によって取り戻さなければ人類は消滅する。許された猶予は、わずか五日間。テラノーツ(地中潜行士)は、南太平洋マリアナ海溝から、未知の世界へ旅立つ。


ストーリー自体、大体予測のつくものである。この映画の見所は、人類に一番身近でありながら遠い存在である地球内部をどのように映像化しているかである。ジョン・アミエル監督は、このリスクに立ち向かった時の気持ちをこう語っている。「正直、怖かった。参考に出来るものは何もなく、全て一から創造するしかなかった。あらゆる科学的なデータを集め、そこから想像力を膨らませていった」と・・・。視覚効果は「未知との遭遇」などに参加したベテランが担当、インパクトのある数々のシーンは、世界から有数の工房が集められたそうだ。更に、溶岩の流動的なシーンなどは、船舶や航空機などの開発に用いられる「計算流体力学」のプログラムを購入して、その粘性の動きをリアルに再現したと言う。この映画は、腕によりをかけて作り上げたリアルなシーンの数々が楽しめる。アメリカだからこそ作りえた映画といえる。

随筆のページへ 映画のページへ トップページへ


STORY
監督:ジョン・アミエル
出演:アーロン・エッカート 、 ヒラリー・スワンク
ボストン。午前10時30分、ペースメーカーを付けていた32名の人々が一斉に突然死を遂げた。翌日、観光客で賑わうロンドンのトラファルガー広場。鳩の大群が突然方向感覚を失って暴れ始めた。さらに2日後、スペースシャトル・エンデバーが地球へ帰還途中、軌道をはずれロス市内へ不時着する。世界各地で発生する異常現象に、シカゴ大学の地球物理学者ジョシュは、その原因が地球の「コア(核)」の回転停止であることを突き止める。核は回転することによって、磁場を発生させ、生物を宇宙放射線から守っている。その核が停止したのだ。磁場のなくなった地球が太陽光線をまともに受ければ、1年以内に全てが焼き尽くされる。人類滅亡の危機を回避するため、ジョシュら6人の「テラノーツ(地球潜行士)」は地中探査艇「バージル」に乗り、地球内部をめざした。
(6人のテラノーツ)-----------------------
ジョッシュ・キース博士 地球物理学者
  シカゴ大学で地球物理学の教鞭をとる。  プロジェクト・リーダー
レベッカ・チャイルズ少佐 米空軍
  13才の頃から宇宙飛行士を目指す。  操縦能力は空軍でもトップクラス。
エドワード・ブラズルトン博士 バージルの設計者
  超音波ドリルで岩を砕いて進む、  地球探査艇「バージル」を完成させる。
コンラッド・ジムスキー博士 地球物理学者
  アメリカで一番高名な地球物理学者。
サージ・レベック博士 高エネルギー武器専門学者
  ロシアの武器に精通している原子兵器の専門家。
ロバート・アイバーソン船長 米空軍
  米空軍のベテラン・パイロット。決断力に富、誠実。