映画「亡国のイージス」を観て
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File No.050827

「いそかぜ」副長・宮津2等海佐(寺尾聡)はこう言う「撃たれる前に撃つ。それが戦いの鉄則です。それが出来ない自衛隊に国を守る資格はなく、それを認められない日本に、国家を名乗る資格はない」。
過日、自民党・新憲法起草委員会が1次案を公表した。現行9条を改め「自衛隊」を明確に「軍」とした。更に、集団的自衛権を容認する内容になっている。自衛隊は
24万人の隊員を擁し、5兆円の予算が組まれる。世界でイージス艦を所有するのは、アメリカと日本とスペインだけである。立派な軍事組織として誰もが認めるところである。
内閣情報官・瀬戸和馬(岸部一徳)はこう言う「平和って戦争の狭間に生まれるもんだと俺は思ってるんだ。それが一日でも一年でも十年でも、この国は六十年もその狭間にいるんだ」。
北朝鮮のミサイルは
10分で着弾する。「その弾頭は通常にあらず」という可能性も秘めている。法の裏づけをもって有事に備えることは国家として当然のことである。

今年の防衛白書は、新防衛大綱が策定されてはじめての白書である。「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」を掲げ、国際テロや弾道ミサイル攻撃など、新たな脅威への対処能力重視へ転換をはかるとした。“抑止効果から対処能力重視へ”イージス艦、将来警戒管制レーダー、エアボスなどが取得した情報を如何に有効に機能させるかは、数秒を争う迎撃対処手順が成否を握る。過日可決した「自衛隊法」には「弾道ミサイル等に対する破壊措置」が追加され、その手続きを簡略化することで、現実に即した対応を可能にした。軍事力近代化をはかる中国を、防衛白書では「動向に注目する存在」としている。中国が保有するミサイルのうち、日本などを射程内とする中距離弾道ミサイルは110基あるとされている。近年の中国の国防費は17年連続で10%以上の伸びを示し、今年は2000年度の2倍になるという。ところが、米国防省の試算によれば、実態は公表数字の2〜3倍だそうだ。

24日、中国・ロシアの大規模な合同演習が終了した。山東半島を台湾に見立てて、海上を封鎖し台湾中枢部まで侵攻することを想定した演習である。「反国家分裂法」にみる非平和的方式という表現が現実味を帯びる。更にこれは、日米安保を意識しての行動でもあるらしい。日米共同といえば、23日、次世代型迎撃ミサイル開発を日米分担で行うと報道されていた。日本は推進装置、米は相手の弾道ミサイルを直撃破壊するキネティック弾頭を担当する。この次世代SM3について、初の日米共同迎撃実験が来年3月行なわれる。南西諸島有事を想定した「島しょ防衛」のための日米演習も行われる。その裏には昨年11月中国海軍の原潜が日本領海を侵犯したという事実がある。他にもアメリカの模擬弾を使って、エアボスのミサイル探知実験を行うなどなど日米共同は目白押しである。「不安定の弧」の東の端を前にする日本は、米軍再編という状況からも、米との繋がりを一層強いものにしなければならない。

近時の中国の動きを見るに、実に腹立たしい思いである。中国政府がやらせたと言っても過言ではない4月のデモ。大使館や領事館を破壊したにもかかわらず、謝罪する様子は全くない。更に、自分のほうから会いたいと言って来ておきながら、勝手にドタキャンして帰ってしまう。一国の首相に対して何と言う無礼であることか。しかも、そうさせた日本が悪いとうそぶく。東シナ海のガス田開発では、自分のものは自分のもの、お前の分を半分わけしようと言いだす。「沖ノ鳥島」は「岩」だと言い、資源があると分かったとたん、尖閣列島は自分のものだと言いだす。3兆円にも及ぶODAは、中国の8割の人が知らない。「日本」と聞けば5割が「南京大虐殺」と反応する教育。傍若無人の中国に国際的な常識など通用しない。私ならとっくに、「ODA中止」「大使引揚げ」ぐらいの強硬手段に出ている。

宮津  「海上警備行動の範疇では、こちらが攻撃しない限り、貴艦は機銃弾一発撃つことが出来ない。撤退か先制攻撃、選択はそのどちらしかない」
阿久津 「撤退するつもりも先制攻撃をかけるつもりもない!それが我々海上自衛官としての任務だ」

6月韓国漁船が日本のEEZ内に入る事件があった。漁船は日本の海上保安官を乗せたまま逃走した。韓国海洋警察庁とにらみあった時、七管に電話やメールが殺到した。その数800件に及び、そのほとんどが海上保安官を激励するものだったという。「頑張れ」「一歩も引くな」。これこそが国民の気持ちなのである。勇敢にも漁船に飛び移った保安官は、国の「威信」と「主権」を守る姿を見せてくれた。そこに多くの人が感動したのである。我々は「自衛軍」にそういうものを期待している。

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STORY
監督:阪本 順治    出演:真田広之、寺尾聡、中井貴一
「いそかぜ」副長の宮津(寺尾聡)の家に、ある男が訪ねてくる。それがすべての始まりだった。
今回の訓練を審査する溝口3佐(中井貴一)率いるFTG(海上訓練指導隊)がものものしい装備とともに乗り込んでくる中、「いそかぜ」は出航。しかし、衣笠艦長が何者かに暗殺され、海上からは謎の女が秘かに艦内に侵入し、陰謀が進行しつつあった。
そんな中、魚雷発射訓練中に事故が発生し、新米の乗員だった菊政が魚雷の下敷きになって死亡する。それでも訓練を続行しようとする艦の上層部に抗議しようとした先任伍長の仙石(真田広之)は、FTGから驚くべきことを告げられた。「艦内に某国の工作員が潜入しており、この艦の占拠を狙っている。我々FTGは、テロを未然に防ぐために来た政府の諜報機関DAISの調査官である」と。そして、その工作員、如月行(勝地涼)を操っているのは、ヨンファという恐るべきテロリストであり、宮津の息子も利用され殺された、と言うのだ。しかし如月は自分がDAISの一員であり、溝口こそがヨンファ自身だと訴える。・・・・・
最近、テレビ番組で「女王の教室」というのがある。これは、小学校の教室という「温室」を、大人社会の厳しい論理が襲ったらどうなるのかという、一種のシュミレーションである。毎週興味深く見ている。今回の映画も、平和な日本が戦争に突入したらどうなるのか、というシュミレーションだろう。「うらかぜ」が撃沈したとき、テロリストのヨンファが言う。「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」。更にヨンファは「国家安全保障会議」の説得に対し「首都が壊滅し、一千万を超える人間の命が奪われようとしているにもかかわらず、まだ、そんな姑息で愚かな説得が通じると思っている。その状況認識の甘さは、いかにも日本人らしいな」
防衛庁・来年度予算概算要求・・ミサイル防衛1500億円 平成17(2005)年9月1日 西日本新聞
防衛庁は31日、来年度予算の概算要求をまとめた。2006年度末の配備開始を目指すミサイル防衛(MD)のため、米国と技術研究を進めてきた次世代型迎撃ミサイルを開発段階へ移行するほか、昨年秋の中国海軍潜水艦による領海侵犯を受けた対策などを強化。本年度予算比1.2%増の4兆8857億円を盛り込んだ。MD関連予算は本年度より302億円多い1500億円。海上配備型上層システムの迎撃ミサイルの開発に日米共同で着手する。防御範囲が半径数百キロだった従来型より拡大。迎撃をかく乱するため、弾道ミサイルが放つ「おとり弾」にも対応できるシステムとする。イージス艦や地対空誘導弾パトリオットの能力アップを図るほか、来年度から弾道ミサイルを探知、追尾する新型レーダー「FPS−XX」を全国4ヶ所に配備する。まず、鹿児島県薩摩川内市の航空自衛隊下甑島レーダーサイトに新設する計画で、08年度の管制を目指す。外国の潜水艦による領海侵犯対策は、本年度比23億円増の58億円を計上。侵犯した潜水艦に対して、より確実に浮上・退去要求が出来る手段として、哨戒機から投下する「対潜モールス弾」の研究に取り組む。
「あしがら」完成 イージス艦半数 佐世保に 平成20(2008)年3月15日 西日本新聞
 三菱重工業長崎造船所から13日、海上自衛隊に引き渡された新型イージス艦「あしがら」(7700トン)は、海自佐世保基地三隻目のイージス艦として配備される。日本が保有する6隻の半数が集中することになる同基地は、弾道ミサイルを保有する北朝鮮や増強著しい中国海軍の動向をにらみ、ミサイル防衛(MD)と高度な艦隊防空力という二つの「盾」を備える拠点としての位置づけが一段と鮮明になる。 佐世保に既に配備されているイージス艦は「こんごう」と「ちょうかい」。防衛省は昨年12月に米ハワイ沖で実施したMD実験で弾道ミサイル(SM3)を実験配備。2010念までに「ちょうかい」など他の同型艦三隻にも順次搭載し、防空体制強化を図る計画だ。 「あしがら」は「こんごう」型とタイプが異なり、現時点でMD対処機能はない。ただ、高性能レーダーで同時に10以上の航空機やミサイルに対処する機能は「こんごう」型と同水準で、新たに敵艦レーダーに探知されにくいステルス性も備える。「あしがら」の配備によって佐世保基地の艦隊防空能力は飛躍的な向上を遂げ、MDを含む多岐にわたる有事即応体制を整えることになる。