将来は太陽熱も利用

半導体を使って実用化


年月不明

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file-No. 040530
米国の熱電気発電機
 アメリカでは最近空軍が出力百hの熱電気発電機を完成したと伝えられている。ソ連のものより六倍以上大きいわけで出力が普通の室内照明や、テレビ、家庭用各種モーターの電源には、これで十分間に合う。材料はフットボールくらいの大きさで、重さは十八`。燃料にはプロパンガス、ガソリン、ケロシンなどが使われているが、放射性同位元素を熱源に利用する改良型の開発が進められているという。アメリカで、この研究にとくに力を入れているのはウエスチングハウス電気会社だ。

プラズマ熱電対
 さらにロスアラモス国立研究所では、プラズマ熱電対による発電が研究されている。プラズマとは気体の原子が、超高温下のはげしい運動の結果、核と電子にばらばらに分解され、うず巻いている状態をいう。これは気体でありながら、非常によく電気を通す。そこで、プラズマを半導体と組み合わせて熱電対を作ると、理論的には三〇%以上の効率で熱を電気に変えられるという。セシウムのプラズマを用いた実験用装置での熱効率はまだ五%ていどだったが、将来は核融合反応の高熱を直接電気に変える方法として注目される。

熱電子放射の利用
これらとはまったく違った方式によって熱を電気に変えようとする研究もある。真空管の中で行なわれている『熱電子放射』を利用するのである。金属を真空中で熱していくと、ちょうど水が沸騰して、蒸発するように、電子が飛び出していく。これが熱電子放射で、ゼーベック効果と前後して一八八四年、発明王エジソンによって発明された。二極真空管はこれを応用して、交流を直流に変えるものだ。陰極のタングステンに交流の電流を通じて加熱し、飛び出してくる熱電子を陽極でつかまえる。陽極にぶつかった熱電子は外部の回路を適って陰極にもどってくるが、この逆の方向には電子は流れない。こうして交流は直流に変えられる。そこで真空管の中の陰極に外から熱を与え、熱電子を流れとして、うまくとり出すことができれば、理屈のうえでは熱

ロスの多い火力、水力発電
いまわれわれが使っている電気は、普通、水カと火力によってつくられている。どちらももとのエネルギーを、一度機械的エネルギーにかえ、これを電気エネルギーにかえる、というまわりくどい方法がとられており、そのさい途中の損失ではじめの量よりも減ってしまう。最新の大火力発竃所でも燃料の熱のエえルギーの四〇%くらいしか電気にかえられない。これが限度だといわれている。原子力発電にしても、石炭のかわりに原子燃料を使りているだけで、あとは普通の火力発電とかわらない。したがって効率も悪い.東海村に建設されるコールダーヒール改良型発電炉の場合でも、最大運転で二七%ていどだ。

有望な熟イオン変換器
無限の電力

GEの熱イオン変換器も効率八%にまでこぎつけており、将釆は三〇%以上にする見込みがある、と発表されている.たとえ効率はあるていど低くても、直接発電が実用化すれば、世界のエスルギー事情に革命的な変革が超こるに違いない。一つは太陽熟利用である。太陽熱がこれまで発電に利用されなかったのは、ボイラー、タービン方式でやるには膨大な設備費が必要で、とても引き合わなかったからだ。しかし直接発電なら話はまったく違ってくる。そのほか海水の熱、ムダに捨てていたようないろいろな熱からも、無限の電力が作られることになる。

 たしかに直接発電の研究はまだ始まったばかりだが、ゲルマニウムの研究が話題にのぼってから、わずか数年のうちに、町のすみずみから山小屋の中にまで、トランジスターラジオが普及したことを考えると、これが実用段階に入るのもあまり遠いことではないだろう。そこで熱電子放射による発電を実用化するためには、熱の損失をなくして、熱電子がとび散らないようにしてやることが必要だ。アメリカのマサチューセッツ工科大学(MT)とゼネラル・エレクトリック会社(GE)がそれぞれ研究中の熱電子エンジン、熱イオン変換器は、いずれもこの難問を解決しようとするものである。MITの熱電子エンジンは、すでに掛率十三%、出力は一平方a当たり0.8hに達している。理論的には効率四五%に出方一平方a当たり五hのものができるはずだという。

小規模な発電、ソ連で実用化
 熱電対は現在では高温皮の測定に広く利用されている。熱電対のつなぎ目の一方を、はかろうとする高温度の物体の中に入れ、他方を氷水の中につけて零度に保っておく。両端に起こる電圧は温度差に比例するから、電圧計によって温度がわかるわけだ。しかし、二つの金属を組合わせた熱電対の起電力は、一度の温度差で、わずか百万分の数ボルトしかない。また電気をよく通す金属は、熱も通しやすいので、高温部から低温部へ熱がムダに逃げてしまう。これでは実用的な発電は不可能だ。ところが半導体で熱電対をつくると、起電力は金属の数百倍、熱の伝導率は逆にずっと低い。それでも一個の熱電対で発電できるのは、一?に達しないから、実際に使うには、これを何百、あるいは千個以上も直列、並列につないでやることが必要だ。すでにソ連ではこうした方法によって、十五hていどの石油発電機が、シベリアの奥地でラジオ、無線電話用電源として利用されている。

開発のカギ、半導体
電気のエネルギーは、電子の流れから生じ、熱のエネルギーは物質の中の原子の振動の激しさによるものと考えられている。お互いに親類みたいなもので、まわりくどい手かずを踏まなくても、簡単に熱から電気へとかえられそうにみえる。現に直接発電の手がかりになるような現象は、すでに前世紀の終わりに、いくつか発見されている。しかし、それが実用化される見通しが開けたのは、ほんのニ、三年来のことである。その一つは最近めざましく発展した半導体を使う方法だ。二種類の異なった金属の線で輪をつくり、二つのつなぎ目の一方を高温に、他方を低温に保ってやると(熱電対=ねつでんつい)このあいだに電圧が生じ、輪にそって電流が流れる。これは一八八一年にゼーベックが発見した現象で、ゼーベッタ効果と呼ばれる。どうしてこんなことが起こるのだろうか。電流とは電子の流れである。電子は原子核のまわりをまわりているが、外からのエネルギーで動きにくい固定電子と、動きやすい自由電子がある。いろいろな物質の中でも、金属は自由電子をたくさんもっているため、電子をすぐ通すのだが、金属によって自由電子の動きやすさに多少の違いがある。この違いがゼーベック効果として現われる。

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