第三の放射能帯発見

風車衛星・・・バン・アレン帯の下に

年月不明


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第三の放射能帯発見

風車衛星・・・バン・アレン帯の下に

【ワシントン二十八日発AP・共同】米航空宇宙局(NASA)は二十八日『さきに米空軍が打上げた風車衛星によって地球の周囲に第三の放射線帯のあることが発見された』と発表した。これによると新しい放射能帯は地上約千六百`のところから四百九十六`の厚さで地球を取巻いている。

 地球の上空には高度二千二百四十`から五千四百四`の間と約一万二千八百`から一万九千二百`のところにかけドーナツ型の二つの放射能帯のあることが米国の打上げた人工衛星で発見されており“バン・アレン”帯と呼ばれている.

地球をテレビに写す・・・風車衛星

二万七千`上空から

【ワシントン二十八日発UPI・共同】米航空宇宙局(NASA)の科学者が二十八日明らかにしたところによると、八月七日打上げられた米国の風車衛星(エクスプローラー六号)は、世界で初めて二万七千`の高さから地球をテレビカメラに収めることに成功した。カメラは重さ約一`、フィルムは八月十四日、毎秒一・五サイクルの波で約四十分にわたりハワイの受信所に送られてきた。フィルムに収まった地球は三日月形だが光線その他の関係で、中央に太平洋だけが光っているだけで、北米大陸などは黒くてみえない。


多人数の放射能検出器

十四年前のきょう、広島はあの悲惨な災渦に吹きとばされたわけだが、短時間に多人数の放射能災害をはかるような機会はもうあれっきりにしたいもの。しかし、もしものことがあった場合、単純なガイガー・カウンターでは能率が上がらず、たいへんな混雑を起こすだろう。その点、こんど英国のFMI電子工業社が造ったシンチレーション計数装置は、右手上左手、衣類、はきものの四つの部位から出るアルファ線とベータ線をそれぞれ区別して、いっぺんに測定できるよう探索子(プローブ)と係数日盛が八つあり、一人五秒で正確なカウントが読みとれるので平常でも原子力関係の工場などで使うのに便利。一人が両手ではかっているあいだに、つぎの人が衣服とはきものの汚染を調べるというような使い方もできる。

 また自然放射能から出るカウントを消して目盛をゼロに合わせるのはめんどんなものだが、これが完全に自動化されて、一時間0・五ミリレントゲンまでなら、熟練者でなくても使いこなせる。放射線の種類によって、カウントはそれぞれ別の目盛に現われるので、出た結果を記録する場合は、被検者が離れてもつぎの番の人が目盛をゼロに合わすまで指針はそのまま動かずに、正確な数値を示すようになっている。


“死の灰”を封じ込む“ガラス”

カスミ石の奇妙な性質

原子炉から出る放射性の廃棄物いわゆる死の灰の跡始末は、原子力の先進国にとって近ごろますます頭の痛い問題になってきた。日本でも東海村の現状では当分まだ安心のようだが、遠からず英米なみになることは必定である。

いまのところよい方法はない

 米国原子力委員会(AEC)原子炉開発部のリーバーマン博士によると、捨てるにも捨てようのない廃棄物が、過去十四年間にアメリカだけでも約二十二万千`g四十年後の紀元二千年には七百五十万`gに達するだろうという。

 いままでの処理法はどれもあまりかんばしくない。たとえば気体の場合は、いろいろのフィルターを通して微細な放射能粒子を除去したのち高いエントツから大気の中に拡散するという方法が普通であるが、これは点検をよほど厳重にしないと大気ばかりか、付近の農地を汚染する恐れが十分にある。また一つ間違うと、先年、英国のウンズケールで起こった事故のように、燃料のウランが過熱されて、火災となり、分裂物質が多量にエントツから逃げ出さぬとも限らない。あのときは九万gの牛乳を廃棄処分にして、なお不安がぬぐいきれなかった。

 液体の廃棄物は特別設計の地下タンクに厳重保管するほか手がない。タンクは鋼製で、二重構造になっており、もし放射能の液体が漏れたりすれば、鋭敏な検出装置ですぐに探知して予備タンクに移すから、万一にも地下水に混入するようなことはないと当局側では保障しているが、その経費はたいへんなものだ。

 固体の場合、英米ではいまのところコンクリートで固めたドラムカンに入れて千ヒロ以上の深海に沈める方法をとっているが、これには日本の科学者から強い横ヤリが入った。深海をゆっくり流れる潜流のために、漁場を汚染する心配があるからだ。

有効な粘土の利用

 これにたいして最近リーバーマン博士は、同感の意を表すとともに、かなり有力な提案をしている。それは液体の廃棄物を無害な固形物に変える方法とも関連するもので、モンモリロナイトのような粘土鉱物の利用である。モンモリロナイトは酸性白土などの主成分で、水に入れると自然にくずれて膨張する性質がある。これに液体の放射性物質を作用させるとすっかり吸収されてしまうから、そのあと摂氏八百度くらいに熱すると、鉱物の格子構造がこわれて不浸透性になる。つまり水ととけず、放射能が土や水にしみこむ心配がなくなるから、一定の場所に保管するぶんには絶対大丈夫というわけだ。

 カナダの原子力公社では、似たような着想から、もう一つひねった研究を進めている。それはモンモリロナイトよりもいっそう変わった鉱物カスミ石が、酸に出会うとコロイド状になる奇妙な性質を利用するものだ。固体の廃棄物、つまり文字どおりの死の灰を酸にとかしてこれをカスミ石に吸収させれば、一種のゼラチンができる。このかたまりを脱酸処理してから、カマに入れて焼けば、そっくりそのままガラスのかたまりになる。その技術は近来ガラス工業でカスミ石を原料とすることが多くなっているから、べつに困難ではない。これはガラスのことだから、長いあいだに多少溶解もしようが、その点は前のモンモリロナイトも同じことで、事実上ほとんど放射能が流れ出したり、漏れて出る心配はない。その物だけを保管しておけば無害なはずである。

 カスミ石はカナダはじめソ連や朝鮮には豊富にありながら、日本では島根県の浜田付近に標本的なものが出るだけというのが難といえば難だが、その点を別にすれ将来もっとも有望な廃棄物処理法かもしれない。

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