原子動力、威力を実証

ミサイル基地の資格十分

昭和33年8月


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file-No. 040530

原子動力、威力を実証

ミサイル基地の資格十分

解説

北極海の潜航横断に成功したノーチラス号は一九五四年一月に世界最初の原子力潜水艦として進水、同年九月から就航した。ことし六月末までの潜航距離は合計十二万四千八百`(水面航行含めると総計十七万九千二百`)に達し、沈んだまま地球を約三周したことになる。排水量二千五百d、全長三百二十フィート(九十六b)で大きさは普通の大型潜水艦なみ.水中最大速力は二十ノット以上、最初につめたウラン燃料だけで十万四十二`(うち半分以上が水中)を航行している。

 建造費は総計五千五百万j(うち原子炉が二千五百万j)で米政府原子力委員会が最近発表したところだと、本年六月現在でノーチラスのほかシーウルフ、スケートの二姉妹艦が就航、現在四隻目が進水すみ。このほか十八隻が目下建造中だ。

こんどの北極海横断成功は、潜水艦用としてばかりでなく一般商船推進用としての原子動力の威力と信頼度を立証したことになる。将来の商船はあらしなどの悪天候の影響を受けない海中を航行する潜水船になるだろうといわれているが、原子動力はこの重要な課題の一つをみごとに解決したわけだ。つぎの課題は原子動力の経済化ということだが、これも原子力発電の発達と並行して解決される目途はついている。

 ノーチラス号の“心臓”は米国のシッピングボート原子力発電所と同じ加圧水(PWR)型の原子炉で、現在のところではその経済性はともかく、船舶炉として信頼度の高い炉である。第二号潜水艦はSIR、SJRなどの設計上更に進んだ型の炉が採用されるはずだったが、テストの結果全部PWRに切替えられたほどで、ここまでこぎつけるまでには約四年間にわたり多くの改良がほどこされている。

軍事的にはミサイル発射台としての潜水艦の意義重視されているおりであり、大洋のどこへでも長時間もぐり込める原子力潜水艦の性能はIRBM(中距離弾道弾)をはじめ、各種のミサイル発射基地としての資格を十分示したといえよう。

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