永年勤続表彰
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File-No.000506

私は、今年「永年勤続表彰」を受けた。入社して35年。思えばよく勤めたものである。山あり谷ありの人生、決して自分一人で乗り切れる年数ではない。それを充分踏まえたうえで、自分の人生を振り返ってみるには いい機会 である。永年勤続表彰とは、「永年勤続の従業員に対して、長年にわたるその功労をたたえ、これを激励し、ほかの従業員の範として能率の向上、意欲の高揚を図る」ことを目的としている。産労総合研究所がまとめた「企業の表彰制度に関する実態調査」においては、永年勤続表彰は92.6%の企業が実施しているという。


しかし、ここにきて世の中の流れは大きく変わってきている。先日、我が社の親会社が「永年勤続表彰制度」を廃止するという情報が入った。親会社がそうなれば、我が社も追随するのは間違いなかろう。そうなると、今年表彰を受けた社員は、我が社最後の表彰となってしまう。「滑り込みセーフ」である。ある会社でも、「ただ永くいてもらっても困る」と、近く永年勤続表彰制度を廃止するといい、またある会社では、99年末に、社宅・社員寮・社内預金・保養施設・扶養手当などの法定外福利厚生制度を全面的に廃止したと聞く。厳しい経営環境が容赦なく「ぜい肉」を切り落としていく。


経済構造変化の流れがこれまでの日本型の雇用システムを大きく変えている。私が株式を持っているある上場一流企業は、今年から定期昇給制度を廃止する。そして@昇格昇給A能力向上の期待度に対応する能力昇給B成果などに応じて特定の対象者に支払う個別昇給の三本立てとし財源は固定せず、毎春の労使交渉で諸状況を勘案して決定するという。株主としては、この厳しい経営姿勢を 一応 評価するものの、そこには賃金制度が、いわゆる横並びの年功型から、年俸制や業績連動型など個人別の成果型へ変化してきているという厳しい現実がある。今年の「春闘」でも金属労協の幹部は「情から冷厳な数字の世界に移った」とコメントした。一言で言うなら「給料は上がらなくても仕方ないが、せめて首にしないで細く永く働かせてください」というところであろうか。厚生年金の基礎年金部分の支給開始年齢が2013年には65歳になる。定年60歳だと「年金の空白」をうむことになる。雇用延長やワークシェアリングは避けられない課題である。


ところが、変わってきているのは経営側だけではない。働く側の意識も変わってきている。制約が厳しい正規雇用を敬遠し仕事と場所が選べて自由度が高いからと「派遣」を選ぶ新人類も少なくない。派遣労働市場は、改正労働派遣法で営業や販売まで対象業務が原則自由化された結果、分野も大きく広り活気づいている。企業にとっては、長期雇用保障を受けない派遣社員へのシフトは「渡りに舟」かもしれない。また一方では裁量労働制の対象職種がこの4月から拡大された。裁量労働制とは勤務を細かく管理せず、協定で定めた勤務時間を働いたと見なす制度である。事務職場などでは技術革新による業務の高度化が進み、会社と社員の双方から勤務時間にとらわれない自由な労働ができるシステムである。厳しい経営環境に加え、急速に進むIT(情報技術)化と少子高齢化の同時進行、働く側の意識の変化が世の中を大きく変えている。変化の早い時代、専門技能といっても市場で通用するのは三年と言われている。「永年勤続表彰制度」などというものは、もはや「過去の遺物」となってしまった。




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