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[キャストアウェイ]

2001年4月1日  福岡・天神東宝
監督:ロバート・ゼメキス
主演:トム・ハンクス
    ヘレン・ハント
「人間は、生きることにおいて何が必要なのか?」そんなことを考えながら見た映画であった。主人公のトム・ハンクスは、一分一秒の妥協も許さない激しいビジネスの中にあって、飽食に満ち足り、プロポーズ直前の彼女と都会の幸せな生活を送っている。しかしそんな彼が、クリスマスの日、飛行機事故で絶海の孤島に漂着し、たった一人で四年間を生きていくことになる。突然訪れた、「有り余る時間」「耐えがたい孤独」「生きる事をも保証されない食料事情」。今までの生活と対比させることで、そのテーマをu浮き彫りにする。

生きるうえで、必要としたのは、同僚に見立てて顔の絵を描いたバレーボールと彼女への変わらぬ愛であった。つまり、ウィルソンと名づけたバレーボールとの現実のコミュニケーション、彼女への精神的コミュニケーションの両方に支えられて生きていく。彼は、絶海の孤島にいながら決して孤独ではなかった。四年と数ヶ月後、意を決してウィルソンと一緒にイカダで大海原へ乗り出す。

嵐に襲われ無事乗り切ったものの、ウィルソンが波に流されてしまう。自分の命をもかえりみず助けようとするが、結局ウィルソンを失い、生きる希望さえも失ってしまう。彼にとっては、ともに生き、耐え抜いてきた同士だったことが強く表現されたシーンだった。

通りかかった貨物船に助けられ無事帰還するが、精神的支えだった愛する彼女は、知人と結婚し子供までいた。他人と結婚したものの、依然として溢れんばかりの愛を持ち続けていた彼女との生木を裂くような別れは感動のシーンであった。孤島では孤独ではなかった彼が、真に孤独になった瞬間である。「人」という字は支えあっているというのは、よく聞く表現だが、文字通りこれを見事に描いた作品だった